『春節の過ごし方、どんな準備が必要?』
前回は春節休暇に伴う出勤日の調整や干支についてご紹介しましたが、今回は春節の過ごし方についてご紹介致します。
日本で生活していると暦や農暦を意識することは非常にまれですが、「中国の春節まであと1ヶ月か」と気づいてから、気候が急ピッチで冬の気配を増していくのは毎年不思議なことです。そして春節を境に一週間ほどすると、だんだんと暖かくなっていくのも毎年、農暦の確かさを感じます。春節はやはり、新しい一年の春を迎える日なのですね。さて、今回は中国の駐在員はどのように春節休暇を過ごしているか、どんな準備が必要かをご説明していきます。
春節休暇には様々な準備が必要
馴染みの小さい店がどこも開いていない!
日々の業務が忙しくて、春節がくることや部下が前後に休暇を取ることは十分承知していても、自分がその期間をどのように過ごすか決めずに「気づいたら、あと一週間で春節」なんて駐在員の方もいるかと思いますが、実はそれは一番避けたいパターンです。
なぜなら、ご近所のいつもビールを買いにいく小さなお店、小腹が空いた時にいくラーメン屋さんや餃子屋さん、肉まん屋さんなど、ちょっとした用事でいく、不慣れな中国語でも理解してくれる馴染みの小さな店は、春節前から一斉にシャッターを下ろすのです。
というのも、こうした小さな店はほとんど地方から来た人が経営しているので、春節時期は長い休暇を取ります。また「何日から何日までいないよ」と事前に言ってくれることは少ないので、行ってみたら閉まっていた!ショック!ということになります。となると、いつも通りの生活を送ることは難しくなります。
農暦の1日目である「初一 chū yī」は小さい店は全部閉まって、通常どおりなのは一流ホテルとコンビニくらいでしょうか。ちょっとした食事をさっと済ますようなことが一番難しくなります。スーパーも営業はしていても短時間になったりします。「初一」はどこも通常お休みですが、二日目の「初二chū èr」、三日目の「初三 chū sān」くらいになると営業を開始する店も増えてきます。なので1,2日は家の中だけで過ごせるよう、食材を買い込んでおくなり、冷凍食品やインスタント食品をストックしておくなり、準備が必要です。
駐在員は帰省や旅行も検討
ご家族がいる場合は中国国内旅行、もしくは海外旅行という選択もあります。
「春節休暇は毎年、日本へ帰って仕事です」という方もいらっしゃいますし、日本へ帰省というのが最もよくあるパターンかと思います。ただし、仕事をギリギリまでやって春節前のいいタイミングでの帰省となると、エアチケットがかなり高騰してしまうのが難点です。また海外に行かれる場合ですが、韓国やベトナム、また同じ中華圏のシンガポール、香港、台湾などはいずれも春節を祝いますので、現地での春節事情を調べておく必要があります。「お店がほとんど閉まっていて、ずっとホテルにいた」なんてことになるかもしれません。
中国国内旅行は、元旦はお休みではあるものの、今は春節時期に国内旅行にいく中国人も増えたので、観光地であれば時短営業だとしても営業しているでしょう。「初一」までは地元で過ごし、「初二」「初三」に飛行機で移動しても良いかもしれません。
ショートメッセージで新年の挨拶
大晦日から「初一」に日付が変わる時、(日本に帰省が決まっている場合は来ないかもしれませんが)地元にいる場合や中国国内に行っている場合は、友人知人から次々と中国語のショートメッセージが届くでしょう。文面は春節を迎える1ヶ月くらい前からネット上などに掲載されるようになるのですが、例えば以下のようなものです。干支をもじったもの、語呂やシャレが効いたものが多いです。
・新年到了,想想送什么给你,又不打算太多,就只给你五千万:千万快乐! 千万要健康! 千万要平安! 千万要知足! 千万不要忘记我!
(xīn nían dào le, xiǎng xiǎng sòng shěnme gěi nǐ, bù dǎ suàn tài duō, jiù zhǐ gěi nǐ wǔ qiān wàn. Qiān wàn kuài lè, qiān wàn yào jiànkāng, qiān wàn yào píng ān, qiān wàn yào zhī zú, qiān wàn bú yào wàng jì wǒ)
⭐︎訳文:新年になりました。何を送ろうかな、あんまり多くないけど、5千万送ります:楽しく!健康で!平和で!足るを知り!私のことも忘れないでね!
⭐︎解釈:「5千万あげる」なんて言われるとびっくりしますが、「千万」という言葉は数字以外に「絶対に」という意味があり、それが5つあるので5千万と言うシャレです。)
・鸡年到了,给你祝福。愿你的生活鸡极向上,能把握每个发财的鸡会。把鸡肤保养得青春焕发。事业生鸡勃勃,要记得经常联系哦,不许总关鸡!
(jī nián dào le, gěi nǐ zhùfú, yuàn nǐ de shēnghúo jījí xiàngshàng, néng bǎwò měi ge fācái de jīhuì. Bǎ jīfū bǎoyǎng de qīngchūn huànfā. Shìyè shēng jī bó bó, yào jì de jīngcháng liánxì wǒ, bù xǔ zǒng guānjī.
⭐︎訳文:酉年になったのでお祝いメッセージです。暮らしがよくなり、お金儲けのチャンスをつかめますように。お肌が青春のようにピカピカでいられますように。事業が繁栄しますように。頻繁に連絡くださいね、いつも携帯の電源を切っていたらダメだよ!
⭐︎解釈:「鸡(jī)」と同じ音を多数入れ替えています。「鸡极」「鸡会」「鸡肤」「关鸡」はいずれも「积极(jījí 積極的に)」 「机会(jīhuì チャンス)」 「肌肤(jīfū お肌)」 「关机(guānjī シャットダウン)」の意味です。)
いろいろな人からいろいろな文面が届くので、気に入ったものや面白いものを、差し出し人名だけ変えて転送すれば良いでしょう。中国人でもイチから自分で考えて作成している人はいませんので、気楽に。あまり悩む必要はありません。
静かな春節
中国人にとって春節といえば「鞭炮(biān pào)」、爆竹を鳴らすことが春節の伝統的な楽しい行事でした。
筆者がいた上海では、農暦の大晦日「除夕(chú xī)」の夜22時くらいからバチバチと爆竹が鳴り始め、日付が変わる0時前後はたくさんの人が一斉に爆竹を鳴らすため、轟音が地響きのように聞こえてくることが常でした。この時に外を歩く、もしくは車に乗っていると、轟音が鳴り響く中、煙と赤く染まった地面しか見えず、本当に戦争映画のワンシーンのようでした。この轟音が幼少から身体に染み込んでいる中国人にとっては、恐怖を感じるどころか純粋に楽しい時間なので「もしお金持ちになったら、爆竹を思いっきりやってみたい」なんて無邪気に言う大人も少なくないのです。
上海では大晦日と、お金の神様「财神(cái shén)」を迎える旧暦5日に日付が変わる「初四(chū sì)」の夜中、この2日間が轟音に包まれる日でした。「财神」は散らばった爆竹の赤い燃えかすを目印に家にやってくるのですぐに片付けてはいけないとされ、5日は町中が真っ赤に染まっていたものです。
しかし今年元旦より、上海では大気汚染の影響で爆竹は市内では全面的に禁止となってしまいました。他に浙江省の杭州や河南省の鄭州なども全面禁止になりました。日本の新年のように、しーんと静まりかえった春節となりますが、「大気汚染の原因となるのは理解するけど、爆竹のない春節なんてつまらない!」と思っているのは中国の子供ばかりでなく、大人のほうがむしろ多いのかもしれません。
春節の楽しみ
爆竹ができなくなり、中国人は春節に主になにをして遊ぶかといえば麻雀です。春節は日本の昔のお正月のように、親戚や旧友が入れ替わり立ち替わり、挨拶にやってくる(「拜年(bài nián)」と言います)日なので、家の中で一緒にお茶やお酒を飲んでおしゃべりしたりして過ごします。人数が集まったら「麻雀やろう!」となって、ジャラジャラと始まります。ルールが難しい日本の麻雀とは違い、中国の麻雀はシンプルに良い運の駒を待つだけなので、子供や老人も一緒になって遊ぶのです。
もし駐在員が春節時期に帰省せず、旅行にもいかず、地元で春節を過ごすということになれば、親しい中国人の友達の家に遊びに行くことがあるかもしれません。その時は家族と麻雀卓を囲むことになるかもしれませんね。
お家に遊びに行く場合、もし友人にお子さんがいれば忘れてはいけないのがお年玉「压岁钱(yā suì qián)」。「红包(hóng bāo)」とも言います。上海では、ある程度の年齢になると冬のボーナスをもらっても、すべて親戚の子供たちへのお年玉に消えると言われていますが、2015年の新聞記事によると、上海の小学生の一人が受け取るお年玉の合計平均は4762元とのこと。祖父母からは1000〜2000元、両親からは1000元、親戚からは500〜800元、その他の知り合いからは300〜500元が相場というので、日本人の感覚からすると2倍くらい多めではないでしょうか?! お年玉を受け取るお子さんの年齢や、お子さんの父親と自分の関係などを考慮して包む必要がありますが、なかなか難しいですね!
以上、駐在員の春節の過ごし方についてご紹介しました。1年に1度しかない春節、楽しく有意義な時間を過ごせるといいですね。