『嬉しい三連休、清明節ってなにする日?』
以前、2017年度の中国の国定休暇は、休暇日数が例年よりかなり少なく、さらに土曜日出勤が多くて過酷であるということをご説明しましたが、そろそろ春節休暇後、待望の三連休である「清明节(qīng míng jíe)」がやってきます。2017年の「清明节」は4月4日で、日曜日の2日から3日間が休みとなり、1日土曜日は出勤となります。
中国の暦は中秋の名月を愛でる中秋節など、日本人に馴染みのあるものありますが、この清明節は駐在員でもイマイチどういうものなのかよく分からない感じではないかなと思います。今回は清明節とはどのように過ごす日なのか、どんな意味があるのかを説明していきたいと思います。
中国のお墓参りは1日仕事
お墓参りは小旅行
まず一言で清明節は何かと言えば、日本のお彼岸と同様、「扫墓(sǎo mù)」お墓参りに行く日です。清明節は中国の人口の9割以上を占める漢族の風習であり、およそ2500年以上の歴史があると言われています。毎年春節から2週間後が清明節です。
では中国のお墓はどこにあるかと言いますと、都市部で墓地を見かけることはまずないので不思議に思う人もいるかと思いますが、郊外にあります。上海に暮らす人の場合、先祖の墓はたいてい江蘇省や浙江省の郊外にある人が多く、清明節の前になると墓参り用に江蘇省や浙江省行きのバスチケットが各地で売り出されているのを目にします。
郊外となれば2、3時間くらいで着くので早朝出発の日帰りが多いですが、中には郊外という距離でない人もいて、その場合は泊りがけでのお墓参りとなります。出稼ぎなどで日帰りが難しい人が増えているという背景もあるのでしょうか、2008年までは1日だけの国定休暇でしたが、翌年2009年より三連休となっています。
中国の墓地は日本の墓地のように整備された石畳の一角に墓石が規則的に並んでいるのではなく、小高い山や丘などの側面にあり、周辺は舗装されていないところも多く、自然豊かな環境であることが多いです。農家のお墓の場合は、なにもない大地にいきなりお墓だけがぽつんとあったりします。なお、日本のように複数名の先祖が合わせて弔われている一家のお墓ではなく、一人一人個別のお墓になっています。
お墓参りではお墓の周りの草むしりをしたり、中国式の大きなお線香を焚いたり、お花のほか、お菓子やお酒なども供えたりします。また伝統的には「烧纸钱(shāo zhǐ qían)」といってあの世の紙幣を模したもの「冥纸(míng zhǐ)」を燃やしますが、最近は安全と大気汚染の観点からあまり薦められていないようです。
お墓参りのタブー
中国でのお墓参りにはいくつか「禁忌(jìn jì)」、つまりタブーとされることがいくつかあります。まずは「孕妇避免扫墓(yùnfù bìmiǎn sǎo mù)妊婦はお墓参りに行ってはいけない」。理由としてお墓参りまでの混み合った道のりが妊婦には負担が大きい、屋外にあるので冷えやすい、紙を燃やすので空気が悪くなるため、などと言われています。次が「不能穿大红大紫去扫墓 (bù néng chuān dà hóng dà zǐ qù sǎo mù)派手な服を着て行ってはいけない」。赤や紫など派手な服を着て行くことは先祖に失礼にあたります。ほかに「扫墓时间最好选在阳气比较旺的时候(sǎo mù shí jiān zuì hǎo zài yángqì bǐjiào wàng de shí hoù) 暖かい時間に行く」。時間は朝9時から15時くらいまでに終わらせて山を降りるべし、とされています。最後に「发不遮额忌买鞋(fā bù zhē é jì mǎi xié)髪でおでこを隠さない、新しく靴を買わない」。清明節は「鬼节(guǐ jíe)」つまりお化けがたくさんいる日であり、おでこには「正气(zhèng qì)」と言われる生命エネルギーがあるので、その日におでこを隠すと運気が悪くなると言われています。「鞋(xié)鞋」は「邪(xié)」と同じ音なのでこの日に鞋を買うのは「不吉利(bù jílì)不吉」とされています。
もうひとつの意味
清明節のイベントは実はお墓参りだけではありません。郊外に行って青々とした草や鮮やかな花々を見て春の遠足を楽しむのも清明節の伝統の一部であり、それを「踏青(tà qīng)」と言います。中国にいると漢方の考えである「阳气(yángqì)明るく暖かい気」「阴气(yīnqì)暗く冷たい気」といった言葉を日常生活でもよく耳にしますが、お墓参りというのは後者にあたるので、春の暖かい日差しをたっぷり浴びて心身のバランスを整えるという意味があるのです。
清明節時期の食の楽しみ
清明節の楽しみといえば「青团(qīng tuán)」、草団子です。もち米に「浆麦草(jiǎng mài cǎo)」と言われる一種の草の絞り汁を加えて作ったお団子にあんこを入れたものです。草の香りがして、春の訪れを感じる風物詩となっています。もともとは上海近郊の江南地域の食べ物でしたが、現在は北京などでも売られています。
清明節のもう一つの楽しみは、なんといっても新茶。清明節前に摘まれた茶は「明前茶(míng qián chá)」と言われ、甘味があって香りがよい新春の一番茶とされています。まだ寒い時期に摘まれるため成長が遅く、生産量もわずかしかないので希少価値もあります。
外国人として中国に生活している際、いくら親しくても一族のお墓参りに同行することは非常にまれですし(婚姻関係などあれば別ですが)、直接ビジネスに関係することでもないので、清明節の三連休は中国の人たちが何をしているのか謎だったと思います。食の楽しみを含め、春の訪れを感じる一連の行事であるということを認識すれば、中国文化理解の一助となるでしょう。