『こんなに違うの!?~キャンパスライフin中国~』
6月に入り、今年も中国では“高考”(gāo kǎo)が行われました。“高考”とは中国の大学入試のことです。日本では2月に受験シーズンに突入し、受験生やその親たちにとっては人生を左右する一大イベントを前にピリピリムードとなります。人口世界一の中国では大学受験の競争も日本よりはるかに熾烈なものとなります。受験生の中には家族、親族の期待を一身に背負って過酷な受験勉強をしてきた生徒たちも少なくありません。今回は中国での大学受験事情、そして入学後のキャンパスライフについて日本との違いなどをとりあげていきたいと思います。
受験者数900万人越え!中国のセンター試験
“高考”とは正式名称「全国普通高等学校招生入学考试」(quán guó pǔ tōng gāo děng xué xiào zhāo shēng rù xué kǎo shì)で、日本で言うところのセンター試験のようなものです。中国の学校は日本と違って9月に始まるので、受験シーズンはこの高考が行われる6月になります。日本ではセンター試験を受けた後に各大学の試験を受けるか、私立大学についてはセンター試験を受けずに各大学の試験を受けるだけのこともあります。中国では大学に入るためにこの“高考”を必ず受験しなくてはなりません。そして基本的にはこの試験一発勝負です。高考の点数で志望校に行けるかどうかが決まります。そのため受験生のこの日にかける思い、感じるプレッシャーの大きさは想像に難くありません。受験生だけでなく街を挙げて試験会場に向かう受験生を見送ったり、受験生が遅刻しないように各交通機関が協力したりと毎年日本では考えられない盛り上がりを見せます。なぜそこまで過熱するのかと言うと、人口が多いことによる競争率の高さに加え、中国が根強い学歴社会であるという点もあります。やはり良い企業に就職するには相当強いコネか、そうでなければ高い学歴が必要です。特に貧しい家庭出身の学生にとって大学入学は一発逆転のチャンスとも言えます。ただしこの“高考”が完全に公平なテストかと言うとそうでもありません。各大学にはどこの省から何人の生徒を受け入れるという規定があり、地元の学生の枠が多めに設けられます。例えば上海の大学なら上海戸籍を持つ学生の入学枠が多めに設けられています。大都市への人口流入を防ぐためです。そのため地元に行きたい大学の無い生徒にとって、他の地方の大学に行くことは本当に狭き門になってしまうのです。
「プライバシーはほぼ無し!」なキャンパスライフ
さて、過酷な受験競争を勝ち抜いて入学した大学で、学生たちはどんな生活を送るのでしょうか?中国の大学生は基本的に寮生活を送ります。大学は大抵広大な敷地の中に、図書館、食堂、学生寮、職員宿舎、売店などがあり、一つの町のように大規模なものもあります。学生たちはよほど実家が近くない限り、夏休みと冬休み以外は帰省しません。実家が同じ市内にある場合などは週末に帰宅することもありますが、週中はやはり寮で寝泊まりします。一般的には6人~8人部屋で二段ベッドと机がぎっしり詰め込まれています。完全にプライベートな空間はベッドの中のみという環境です。それでも電話の内容はお互い丸聞こえです。日本人の学生にとっては考えられない生活ですね。ただし留学生の場合は普通の学生とは別に宿舎が設けられていることが多く、二人部屋や個室などが使えます。
安い!おいしい!学生食堂
食事は基本的に三食とも食堂で食べます。味については大学により様々ですが、基本的に学生向けなので安く、ボリュームたっぷりです。男子学生でも数元でお腹いっぱいになります。食堂に入ると数十種類の出来たての炒め物や煮物、揚げ物などが並んでいて、こちらが指さしたおかずを職員の方がよそってくれます。また必ず食堂で食べなければいけない決まりはないので、大学近くの飲食店やファストフード店にいる大学生もよく見かけます。宿舎の中にお菓子やインスタントラーメンを持ち込んで夜食として食べていることもあります。また春節などで帰省し、新学期に戻ってきた時は各地の特産品を持ち寄って宿舎内で交換し合うこともあるそうです。
勉強は?恋愛は?バイトは?基本的に真面目な中国人学生
大学のレベルや学生個人の性格もありますが、中国の大学生は基本的に真面目な子が多い印象を受けます。やはりまだまだ経済格差もあり、行きたい人がみな大学に行けるわけではありません。中には家族が相当苦労して学費を工面している家もあります。そこまでして行かせてもらったからには真面目に勉強に励み、良い仕事に就きたいという子が多いのかもしれません。日本の大学でよく見かける「バイトに明け暮れて授業に出てこない本末転倒な学生」の姿はあまりなく、大体が勉強中心の生活を送っています。ただし夏休みや冬休みになると店や工場などで「暑假工」(shǔ jià gōng)「寒假工」(hán jià gōng)という学生向けの募集があるので、そういったアルバイトで稼ぐことはあるようです。恋愛事情については普通の学生らしく楽しんでおり、実際私の友人の何人かは大学時代の同級生同士で結婚しています。宿舎の同じ部屋の学生同士で彼氏の取り合いのような事が起こり、部屋の中が気まずくて仕方が無いという愚痴も聞いたことがあります。また最近では同じ大学内でも“QQ”や“微信”などのSNS上で知り合ってから交際に発展するということもあるようです。
もし中国の大学に通うことになったら~使える中国語フレーズ~
今後、中国に留学する機会があるかもしれませんし、本科生でなくても外国人向けに中国語学習のクラスを設けている大学は多いので、短期間でも中国の大学に通う機会があるかもしれません。大学内で使える中国語フレーズをいくつかとりあげたいと思います。
「你是○○大学的学生吗?」(Nǐ shì ○○dà xué de xué sheng ma?)
あなたは○○大学の学生ですか?
「你的专业是什么?」(Nǐ de zhuān yè shì shén me?)
あなたは何を専攻していますか?
「明天几点开始上课?」(Míng tiān jǐ diǎn kāi shǐ shàng kè?)
明日は何時から授業が始まりますか?
「A班的教室在哪里?」(A bān de jiào shì zài nǎ lǐ?)
Aクラスの教室はどこですか?
大学生の中には留学生と交流したいと思っている学生も多く、日本のアニメが好きだという学生も多いので、こちらから話しかけると結構喜んでもらえます。是非積極的に中国語で話しかけてみましょう。
今回は中国の入試制度と大学生活について紹介しました。もし今後中国留学の予定があるなら参考にしてみてください。
日本では少子化の影響により大学側が学生の確保に頭を悩ませている一方で、中国ではあまりに激しい大学入試の競争を避けて、経済的に余裕のある家は子供に海外留学をさせているようです。隣の国日本への留学を目指す学生も多く、“爆買”ならぬ“爆留学”という言葉もあるそうです。中国の真面目で努力家な学生達が留学して来ることで、今後は日中の学生がお互い切磋琢磨していくことも期待できそうですね。